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なぜ昇給しなくなったか_それは当然なのか

なぜ給与はあがらなくなったか?

(職組ニュース 平成20年10月号)

オーバービュー

まず今回は昇給の基本的な仕組みについて説明したのち、関係する問題について述べます。本学の正職員の給与は「公務員給与に準じている」といわれてきましたが、実は公務員なみではないことは前回のべた通りです。これは本俸が減った部分だけが本学には適用され、(公務員においては)手当部分の割合がふやされたにもかかわらず、増えた部分については本学においては実現されていないためです。これらの事情についてはもっと説明されてしかるべきですが、現状ではとても十分とはいえません。また、給与体系の変更によって新たな問題(教育技術職員などの給与の頭打ち問題が解消しなくなった)も発生しています。多少数字のおおいはなしになりますが、おつきあいのほどを。

昇給という制度の仕組み

昇給とは、本俸(=基本給)の部分が勤務年数によってあがってゆく制度です(もちろん本俸があがると賞与もあがります)。いくら上がるのかは職種、級、号俸によって決まっていますが、それは「俸給表」に明示されています(俸給表は組合から配布している「給与白書」をごらんください)。昇給は毎年1月1日をもって行われます。平成17年以前はだいたい1年1万円くらいだったので、本俸は「年齢」万円になりましたが、いまは昇給額は数千円前後でしょうか。 平成17年度以前は「号俸」は1年に1つあがっていったので「1号」あたりの上がりはばは大きかった(=だいたい1万円)のですが、平成18年度からは年に4号俸あがるのが標準とされ、1号俸あたりの昇給はばは小さくなりました。つまり分割されました(なお、4号俸であっても、昇給の時期は年1回です)。この変更は、場合によっては6号俸昇給とか8号俸昇給を実現するため。よくはたらいた人には昇給はばを大きくするためのものでしたが、6号俸以上の昇給は(勤務年数によって変わりますが)職員数の20%〜40%をメドとしており、かなりの割合です。つまり、公務員だったらまじめな人ほど給与はあがる体系になったのです。一方、福岡大学においては6号俸以上の昇給は存在しないことは前回の職組ニュースでもかかれた通り。

じゃあ、なんで昇給しなくなった?

ここまでの説明でも本学の給与体系は手当の部分はもちろん、昇給の部分においても公務員におよばないことがお分かりと思いますが、およばないどころか全然昇給してないのは何でだ?と思うのが当然でしょう。念のため書いておきますが公務員は平成18年度以降も(例外的措置はあるにせよ)昇給しています。昇給ストップが行われたりしたら大問題のはずです。
一方、本学では平成18年から現時点まで、手取り額はまったく変わらなくなりました。公務員給与体系の構造改革があったにもかかわらず減らなかっただけマシじゃん、ってのはほとんど誤解だというのは前回述べた通りですが、本来、給与があがらなくなった事態だっておかしい。とりあえずは正当であるかどうかの議論はともかく、いま実行されている「昇給」の仕組みを説明します。

  1. 筆者の本俸は平成17年12月時点で414,200円でした(旧俸給表体系の4級11号俸)。この金額は平成20年現在でも給与明細書にかかれており、実際の手取り額です。
  2. 平成18年1月に新しい給与体系に移行しました。公務員給与の構造改革に「準拠」して本俸は4.8%減らされました。計算すると394,318円になりますが、本来の昇給も加味した新旧の読み替え表なるものがあって、新しい俸給表の4級32号(399,400円)に移行する。この399,400円が新本俸ですが、1月の給与明細にのみ明記されています。
  3. 福岡大学独自の措置として、新旧の本俸の「差額」が新本俸に加えて支給されることになった。差額は414,200 - 399,400=14,800円だが、毎月の給与明細には新本俸+差額(=旧本俸とおなじ金額)が本俸として記載されている。
  4. 一年経った平成19年1月、(制度上の)昇給が行われる。なにがおこるかというと「新本俸」が4号俸あがり、4級36号俸(406,700円)になったのだ。ところが同時に「差額」は新本俸が増えた分だけへらされる。結果として手取り額は平成18年1月時点とまったくおなじ。これが平成20年1月にもくりかえされ、現在にいたるまで基本給・ボーナスはかわらず。

結局、「差額」なるものは「給与がさがらない」ためだけにあるものであって、何かに加えて支給される「手当」ではない。新本俸があがった分、削られてゆく。そして「差額」がマイナスになったとき、はじめて実際の手取り額が増える。旧本俸の金額によりますが、それは来年(平成21年)の1月か、再来年(平成22年)の1月になります。

影響

  • 教育技術職員の旧俸給表における最高号俸は7級22号(427,100円)だったが8級へのワタリが実現しないため、そこからはまったく昇給しなくなっていた(給与の頭打ち問題)。これに対しては「枠外昇給」(=年1,400円)により対応したとしていたが、平成18年の給与改革で5級85号(403,700円)に移行。
    差額は23,400円あり、補填される「差額」は上記のとおりの運用だが、1,400円/年のペースで「新本俸」が増加するとしても、本当の手取りの増加に達するまで16.7年を要し、実現することはなくなった。結局以前は少額とはいえ、手取りの増加はあったのだが、平成18年度以降はまったく増加しなくなった。
  • 福岡大学においては、新本俸+差額がボーナスの算定基礎とされているものの、現在までまったくかわらず。ゆえにボーナスもかわらないのだが、ほぼ3年間、給与が据え置かれたことで退職金ももちろん減る。

大学の説明

以上のように残念ながら公務員並みではない本学給与ですが、公務員と同様に6号俸以上の昇給を実現するとなると、人事考課をおこなう必要がある。また6号俸以上をつくるとなると、同じ金額だけへらした2号俸昇給もつくらなくてはならなくなる、それでもいいのか?というのが今年5月の学長交渉における大学の回答でした。
まず人事考課については、今現在もそれなりに行なわれています。ボーナスには会議にまじめにでたかなども反映されるそうですが、基準は公開されていない。このため、おもいもかけずボーナスが減らされていることがある。たとえば海外の大学の招聘で出張するため、七隈における講義を開講しなかった教授がボーナスを半減された事例がある。本人はしかるべき手続きをふみ、業務として赴いたとしていますが、大学は減らした理由の説明はしていない。また、どんな場合が「懲罰」の対象になるのかはあきらかではないので、産休はよいかもしれないが、病欠をどれだけとっていいのか判然としない。これは賞与の「プラスアルファ」問題といい、長年、組合がその基準の公開を大学と交渉しているものですが、非公開をつづけることで恣意的な運用をしている。
このような現状で本俸部分を人事考課させて大丈夫なのか?という疑問が残ります。

次に人事考課するかどうかはともかく、6号俸以上の昇給の一方で2号俸昇給をつくりだす是非です。大学は総額抑制をしたいがためにこのようにいっているようですが、公務員給与において2号俸昇給は重大な懲罰に相当する、とされており、勤務態度というよりは職務上の問題をおこした場合にのみ適用される「例外」としての存在です。だから6号俸以上を30%つくるかわりに2号俸もおなじだけつくり、総額を一定にするための制度ではありません(だいたいが本俸の基本が4.8%減らしたのですよ。総額はそっちの理由で減っています。)。
そして建て前上、本学給与は「公務員並み」をうたい、上げる時はもちろん、下げる時も職員の了解を得てきました。しかしながら平成18年度の給与改訂では公務員給与とは乖離した部分がさらに多くなりました。職員が実態を理解し、公務員給与並みを求めるなら、今度は大学がその建て前を遵守すべきでしょうし、公務員並みの給与体系が維持できないなら職員に了承をもとめるべきでしょう。

暫定案

給与の問題については、ずいぶん前から独自給与体系の構築も議論されてきました。公務員給与については職能手当の部分が増えましたが、本学においては肩書きがそもそも存在しない、ほとんどない職種が多数存在するため、その部分においても公務員並みにはなっていません。
しかしながら、この課題や人事考課は一朝一夕に完了するものではないので、6号俸昇給をローテーションで実現する暫定案も提案されています。公務員においては、3人〜4人にひとりくらいは6号俸となるので、本学においては、各人に対し3年〜4年に一回、6号俸昇給がまわってくるようにする、などです。
給与問題は組織の重大課題ですが、平成18年の公務員給与体系の改革においては、よりはたらく人にインセンティブを与える、といった明確な目的がありました。本学においては、なしくずしに給与カットの口実になっただけでしたが、本来は同様の目的をもって組織のパフォーマンスをあげることを考えるべきだろうとおもいます。

なぜ昇給しなくなったか_それは当然なのか.txt · 最終更新: 2009/09/18 13:32 by yigarash