ユーザ用ツール

サイト用ツール


2009_09_28_緊急アンケート分析結果_1

2009年度 緊急アンケート集計結果

七隈支部では6月の夏のボーナス支給後に、支給額が0.2ヶ月分減額された措置に関してアンケート調査を実施しました。例年、人事院勧告は8月に出されますが、今年は選挙日程をにらんで6月に臨時に勧告が出されました。本学でもこの臨時勧告に従うべきかどうかは議論を要するはずだったと思われますが、大学協議会等での意思決定機関に諮ることもなく、組合への通告もありませんでした。
アンケートはそれらの決定結果、手順に関してどの程度の了解が得られるのかを確認するものです。この原稿を執筆している時点では、本来の人事院勧告も出され、基本給の0.2%減額、ボーナスは結局通年で0.35ヶ月の減額が発表されています。8月のこの勧告をまっての減額でも結果的におなじ結果になる措置もありえましたが、夏のボーナスが減ったことで夏季休暇中の旅行のとりやめ、耐久消費財の購入のとりやめ、ローンの支払い計画の変更などを強いられた方が多数いたようです。 以下では全体的な傾向と、個別のご意見に関してまとめました。特に個別の意見に関しては、考えてみるべき視点を提供してくださるものがおおく、議論の種としていただければとおもいます。

調査規模・回収率

212名から回答(組合員数896,回収率 約23.7%)があった。教員の学部別割合は以下のとおり。

賞与減額への反応:8割超が許容できず・大学側の説明への納得も得られず

「賞与が減額されること自体への許容」では、選択肢(3)〜(5)を選んだ組合員は82%となった。
1.減額されること自体許容できますか。
(1)当然許容できる (2)許容できる (3)許容できないが仕方ない
(4)許容できない (5)とても許容できない (6)わからない



賞与減額の理由として大学側は「これまで通り人事院勧告に従う」、「公共性の高い組織であるので当然」、「社会に対する姿勢を示す必要性」を挙げている。この3つの理由に対しても、80%前後の職員が「理不尽である」という回答を寄せている。
3−1.人事院勧告に今まで慣習として従ってきたから、今回も従う。
(1)非常にもっともである (2)もっともである (3)理不尽である
(4)とても理不尽である (5)わからない


3−2.国から補助金をもらっている以上、公共性が高い組織であり国にならうのが原則。
(1)非常にもっともである (2)もっともである (3)理不尽である
(4)とても理不尽である (5)わからない

3−3.ご父母、同窓生などを含む社会に対する姿勢を示す必要性から実施せざるを得ない。
(1)非常にもっともである (2)もっともである (3)理不尽である
(4)とても理不尽である (5)わからない

減額決定までのプロセスに関して:90%前後が手続きに疑問

 減額実施までの「手続き」については、3つの質問事項すべてに対し「許容できない」とする回答が90%前後となった。「決定までの手続き」に対しては92%が、「大学協議会で審議しなかった」ことに対しては87%が、「組合への相談がなかった」に対しては84%が許容できない、という結果である。

【決定までの手続きに関して】

1.今回の大学側の決め方を許容できますか?
(1)当然許容できる (2)許容できる (3)許容できないが仕方ない
(4)許容できない (5)とても許容できない (6)わからない

2.大学協議会では何の審議もされず、報告事項として扱われた。
(1)当然許容できる (2)許容できる (3)許容できないが仕方ない
(4)許容できない (5)とても許容できない (6)わからない

3.組合に相談することもなく、すでに大学協議会で報告されていた。
(1)当然許容できる (2)許容できる (3)許容できないが仕方ない
(4)許容できない (5)とても許容できない (6)わからない

上記の結果についての自由文回答

「今回のボーナス減額によって困ること」については、77名から回答があった。住宅ローンの返済計画の変更や、教育費の予定の変更を強いられたとする回答がおおい。やはり年度途中でボーナスが減額される事態は想定しておらず、突然の変更・やりくりを強いられたと言えよう。また、耐久消費財の購入の見直し、旅行のとりやめがそれらに続いている。日本国政府が消費刺激策としてエコカー減税やグリーンポイント制度を施行しているが、賞与減額によりそれらの施策も利用できなくなった、との回答があった。公共性の高い組織としては、消費を落ち込ませない方策も視野にいれるべきだったろう。財政上の問題がないのであれば、地域社会に対する経済的影響を鑑み、大学らしい合理精神を発揮する選択肢もありえた。以下、回答の多い分野別に列挙する。

  • 子弟の教育費への影響17名:内容としては子供への仕送りの減額、学費支払いの原資の変更・節約の必要、進学先の変更など、少なからず家族の境遇の悪化を強いられているといえる。
  • 住居費(住宅ローンの変更、補修のとりやめ、ローン支払いのため生活費のきりつめ)16名
  • 耐久消費財(車、テレビ、PC)の購入の先延ばし・ローンの見直し・長期化12名
  • 旅行(夏休みの家族旅行、学会)のとりやめ7名
  • 75周年募金のとりやめ6名:募金するつもりだったが断念したという意見が多いが、今後は大学へのいかなる寄付にも応じない決心がついたとするものものあり。

なお「人事院勧告が上がる時には従うのに、下がる時には反発するのはおかしい」との少数意見があった。これについては過去の職組ニュースで解説しているが、改めて組合の新しいWebサイト(http://fu-union.jp/)にて再掲し、給与問題の理解の助けとする予定である。

使途についてのご意見

「減額された予算の使い道」に対しては111名からご意見をいただいた。
最多の意見は、学納金の値下げおよび奨学金の原資とするなど学生支援にまわすべき(31名)との内容である。特に「財政上の問題がない」ならば、「痛みを分かち合う」ためにそうすべき、という説明が多い。また、学生の経済的困難の増加を感じるとする意見も多い。大学の本来の顧客(学生)を第一に考える意見が職種を問わずおおい結果は、アンケートの目的外の成果だと思う。
次に多いのが、賞与の削減によって生まれた余裕を、各種手当の実現のために使うべき(22名)とする内容である。これまで原資の不足を理由として実現されてこなかった手当を創設し、労働量に応じた報酬・労働に報いるような賃金制度、嘱託職員の待遇改善など、問題解決を望む内容が多い。本来受け取れるはずだった賞与の一部を、給与のゆがみの是正に使うのは当事者として当然の権利といえるが、裏を返せば現行の賃金体系がそうなっていないことを意味する。問題の大きさの根拠データとして貴重である。関連する回答としては、一般職員の給与が上がらないどころか時として下がっているにもかかわらず、人件費比率が上がっているのはなぜか?また、人件費比率を理由に人件費抑制を図っているが役員手当などが不透明であり、もっと削減できる分野、するべき分野もあるのではないか、との疑問も提出されている。人件費の構造については、職種・職位ごとに数量的に説明が必要である。先の人事院勧告に準拠する件ともあわせて組合webサイトにて解説をしたい。
手当の実現とは多少色合いが違うが、福利厚生の充実を望む回答も3件あった。これも現状の課題の根拠データであると言えよう。
3番目におおい意見は、減額の根拠に説得力がなく次回賞与を増額すべき(16名)である。いずれも減額の理由に納得できない、ということと、「痛みを分かち合う」のであれば、それは大学財政から負うべきはなしであるのと、先の学納金減免に向けるべき、とする内容が多い。また決定の手続きにおいても不当、減らすのであれば役員が率先すべきだった、地域社会に姿勢を示すのであればプレスリリースすべきだがしたのか?などの意見がある。どの意見も大学の決定はスジが通っていない、との下地に基づいている。また今回の減額で浮いた人件費の使途は公開・報告すべき、とする意見もおおい。大学当局の予算の使い方に対しては疑念をもっている方が多いようである。

それ以外の特記すべき意見としては以下のようなものがある。
「国の機関に準ずるなら人件費削減によって大学財政が潤ってはいけない。国に返すべき」 これは先の組合新聞での解説と同じ論拠だと思われる。大学が補助金を受け取っているのは儲けを大きくするためではなく、公益的な使命が認められているがゆえにその機能を果たすうえでの必要経費を補填するためである。それゆえ、人件費が削減できる、ということは、それは必要経費ではなかったという証拠であり、「あまり」があれば返還しなくてはならない。「国の機関に準ずる」とは、そのような意味でもある(なお、平成18年度の公務員給与改革においても個々の公務員個人の手取り額は減ったわけではない。手当によって補填され、昇給も続いている点が福岡大学と違っている)。大学の公益性や人件費の意味を真剣に吟味するならば、今回のような減額措置になったはずであったのかどうか、また減額の理由も今回の大学の回答になるはずなのか、考えてみるべきだろう。

「優秀な教授を招こうとしたら、あまりの給料の低さに断られた。この先、待遇が悪いと優秀な人が来ないばかりか、他大学に逃げだしてゆく。三流大学に一直線ではないか!」 学内の職種・職位間の給与格差はともかく、大学間の競争を考えれば人件費は本来重要な要素であることは論を俟たない。福岡大学の教育職員の給与水準は、九州大学の8割程度となっており、人材を確保するための競争力があったのは過去のこととなっている(この件については平成20年版「給与白書」および過去の職組ニュースにて解説した。これも組合webサイトにて再掲し、加筆したい)。今回の賞与削減も、短期的にはおそらく2億円ちょっとの節約になったであろうが、長期的には福岡大学の未来の可能性を削る。給与待遇の劣化により教授陣の競争力がさがれば、学生の募集はもちろん、補助金獲得額もさがりつづける。億円単位の機会損失は生まれるであろうし、人材の補填はすぐにできることではない。以上の意味で、投資を節約しすぎ、将来の可能性を食いつぶしていることにも目を向けるべきだろう。
以上2つの意見は、人事院勧告の尻馬に乗って安易に人件費削減する当局の重大な視野狭窄や、大学の果たす役割の本来の意味を指摘する内容であり、改めて考えるべき視点を提供している。

捕捉

アンケート結果はこれだけではないし、個別の意見には貴重なものが多々あった。データはすべて電子化してあり、今後の基礎データとするが、職組ニュースでは紙幅が限られるため、単純な分析についてはとりあえずここまでとしたい。しかしながら、電子化したデータについては、組合Webサイト http://fu-union.jp/ にて閲覧可能としたい。組合員のみ閲覧可能とするため、今後、組合員専用のアカウントを発行する見込みである。詳しくは続報を待たれたい。

2009_09_28_緊急アンケート分析結果_1.txt · 最終更新: 2009/09/25 11:57 by yigarash