教育技術職員の給与に関しては長きにわたって問題として取り上げられ、学長交渉の項目ともなってきた。このために大学は、すでに対応を済ませた課題として認識している節すら感じられる。しかし問題の根本はなにひとつ解決していないどころか平成18年度の給与規定改定においてはさらに悪化した点すらある。この文書では給与改定以前から続いている問題の基本的な構図と、ここ2年ほどで悪化した問題についての概要を説明する。
まず問題に関して、当初から改善を求められていた基本的な構図を説明した後、平成18年度以降に付け加わった課題・問題が拡大した点を説明する。そののち、それに対する教職員組合のとりくみ・大学の対応が問題の改善につながってこなかった経緯をのべ、最後に問題解決の方向性についての議論を紹介する。
基本的に教育技術職員の職種自体が当初から大学によって恣意的に運用され、特に給与体系において不利益があり、組合としても交渉課題としてきた。結局解決をみることなく今日に至ったが、平成18年度の給与体系の改定によって改善するどころか以前のほうがまだましな状況に陥った。以前に提案されていた解決案も解決の方法にならなくなった点で解決方策を根本的に考え直さねばならなくなった。以下では、平成18年以前から問題とされていた構造と、平成18年度以降に新たに出現した局面について説明する。
【 当初からの課題「旧8級(現6級)適用問題」】
しかしながら、これらの論理はいくつかの点で恣意的と言わざるをえない、とする反論もある。たとえば以下のようなものである。
現状を打開するため平成18年においては、「5級(旧7級)の最高額に達した場合は6級(旧8級)へのワタリをつける要望」が学長交渉で行われた。これに対し大学は「枠外昇給」という制度により昇給はある、との回答をしたが、平成18年度の給与規定の改訂により「早い年齢(40歳代)での昇給の頭打ち」を解消するものではなく、むしろ事態は悪化している(後述)。また、枠外昇給は教育技術職員のみならず教授にも適用される制度だが、教授に適用される俸給表では昇給の頭打ちは高い年齢でおこる点で事情が違っている。
【 平成18年以降に悪化した問題】
例:年齢23歳にて技手に採用 :1級22号本俸月額162,300円
_10年勤続33歳で技士補に昇格:3級1号本俸月額221,100円 _さらに8年勤続41歳で技士に昇格:5級1号本俸月額289,700円 _63歳で5級67号本俸月額392,100円
なお公務員においては昇給の号俸数は4号俸となりうる。人事院勧告によれば、“良好な成績で勤務した職員の昇給の号俸数を4号俸にすることを標準とする”とされている。しかし本学においては昇給4号俸の明確な基準は不明である。
【 その他の問題】 以上の問題のほか、
などがある。いづれも規定が守られず、かえって「方針」や「運用」が優先している事例である。
平成19年現在における教育技術職員(正職員)の総数とうちわけは以下の通り。
理学部(1)薬学部(2)工学部(17)スポーツ科学部(4)研究推進部(2) 環境保全センター(1)アニマルセンター(1)RIセンター(1) 医学部(47)病院(1)所属不明(1) 合計 78名 (これ以外に嘱託で9名程度)
平成17年度まで教育技術職員は採用されており、今後も長い間、当事者が存在する。年齢階層別では、20歳代で2,30歳代で18, 40歳代で35, 50歳代で25, 60歳代で1となっている。 解決方法としては、教育技術職員にも役職をもうけることが考えられるが、教育技術職員の意見をヒアリングした結果としては、以下のような方向性が望まれている。 1)ルール通りの運用 教育技術職員に対する給与・身分の問題は、規定にあることが実現されず、規定にない運用が既成事実化したことに基づく部分が多い。6級が給与規定上、存在するにもかかわらず,実現しない理由については以上にのべたとおりだが、当事者からは、役職を作ることで6級適用とするのではなく、役職無しでの6級適用を望む意見が多数を占める。 これはルール通りの運用をのぞむ、明文化されていない勝手な運用のひとりあるきをやめてほしい、という原則からである。 2)公平性の問題 人件費抑制は大学運営の重要な課題であろうが、教育技術職員においては給与などの制度が変わるのを機に特に不利益な変更がいつのまにかなされてきた。一方、公務員給与が職責に応じた体系に変更された際、事務職においては役職(正規職員数では42%)とそれに応じた手当てが増設されてさえいる。教育技術職員だけが犠牲になっている現状は公平性を欠く。人件費抑制をはかるなら全職員の問題として解決して欲しい。
以上の問題を簡単にまとめると以下のような流れになる。
ここまでの課題のおおくは40歳以上で顕在化するが、その年代では生涯でもっとも支出が多くなる。一般的に子供が高校生、大学生の頃に相当するためである。本俸が低く抑えられたままの状態が続くと、退職金、年金問題等も含めて、経済的に厳しい状況であると考えられる。
これに対しても大学は「下がることはない」との説明を続けてきたが、今後、消費税率の上昇、住民税の改訂など、課税体系がかわれば可処分所得は減少する。また公務員給与体系がより職務給にシフトすれば、肩書きの存在しない本学職種では昇給が期待できない。
現時点の非公式のヒアリングでも、多くの教育技術職員より「貯金を使い果たしてしまった」「借金をした」といった話がでるが、将来においてはより問題が悪化する。
教育技術職員の給与問題は以前から指摘されてきたが、抜本的な改善は結局はかられず、給与体系の改訂に伴ってか えって不利益変更が追加されている。給与体系の改訂は全職種で行われており、それなりに全職員が痛みを感じてはいたが、教育技術職員の件についてはあまり知られずに特に問題が拡大している。この資料を議論のたたき台として、改善につなげてほしい。